建設業許可は取得すると業務の幅が広がる一方、厳しい要件が設けられています。
建設業許可の要件を満たすために、場合によっては数年かけて準備をしなければなりません。
許可を取得しようとする事業者の中には「裏ワザのようなものはないの?」と専門家に相談するケースもあります。
今回は、建設業許可取得の基本に加えて、実務における裏ワザやテクニックについて解説します。
建設業許可の裏ワザはなし!要件を満たすためのテクニック
建設業許可の要件の中で特に難しいと言われているのは、「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」と「専任技術者」の人的要件です。
この人的要件を満たすための裏ワザは基本的にありません。
要件を満たす事を証明するには、確認書類を何種類も提出する必要があります。
この書類にもし虚偽があった場合は、許可を取得することができません。
また、許可を取得した後に虚偽が判明すると、許可の取り消しや罰則の対象となります。
悪質な場合は、建設業法違反となり逮捕されることもまれにあります。
要件の確認書類については各行政庁のマニュアルに記載がありますが、業者の状況によって他の確認書類を準備する必要もあります。
また、中には代用が利く書類もあります。裏ワザやテクニックと言われるものは、この代替書類を指すことが一般的です。
専門の行政書士であればこのようなことに精通しているので、相談をすることが許可取得への早道となるかもしれません。
- 専任技術者を置く際のテクニック
- 経営業務の管理責任者を置く際のテクニック
今回は、「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を設置する際のテクニックについて見ていきましょう
専任技術者を置く際の裏ワザテクニック
専任技術者は要件を満たすのが難しく多くの事業者が設置方法に悩んでいます。
手引きに記載されている書類を集めることが一番の課題ですが、許可を取得する際の状況は様々です。
- 実務経験の証明方法
- 前もって有資格者を採用しておく
- 過去に他者で専任技術者をしていた場合
ここではイレギュラーな対応方法を紹介します。
実務経験の証明方法
専任技術者の実務経験は、その人が所属していた業者が建設業を行っており、その業務に従事していた事を証明する必要があります。
証明には、「実務経験証明書」という書式に必要年数分の経歴とその時の職名を記載します。
自社での経験の場合
自社での経験であれば、確認書類として「双方の契約印があり工期の確認できる工事請負契約書」が必要です。
上記の書類が準備できない場合は、「注文書+請書」「請求書+その工事の入金が確認できる書類(預金通帳のコピー、出入金明細等)」などでも代用することもできます。
他社での経験の場合
経験が自社ではない場合は、以前在籍していた会社の証明が必要です。
その会社の証明印(代表印または契約印)をもらうことができれば、契約書等の確認書類を省略できることがあります。
しかし、昔務めていた会社に連絡をするのは難しいという場合もあるかもしれません。
このような時は専門の行政書士に相談をしてみるとよいでしょう。
代わりに連絡を取って書類を準備してくれるかもしれません。
また証明印がもらえない場合、以前の会社が建設業許可会社であれば、その許可番号と電話番号を実務経験証明書に記載をします。
もし法人で消滅してしまっている場合は、その詳細を記載し登記簿謄本を添付します。
いずれの場合も契約書等の確認資料は別途必要になりますので、許可行政庁に相談をしてください。
さらに他社での常勤性の確認資料として、「年金の被保険者記録照会回答票」や「雇用保険被保険者証または離職者票」の準備も必要となります。
実務経験の緩和措置
下記の要件に該当する場合は、経験の振り替えを行うことができ、最大2年間の実務経験を短縮することができます。
土木一式工事の経験と、次にあげる業種のいずれかの経験が併せて12年以上あり、そのうち次にあげる業種の経験が8年を超える場合
とび土工工事、しゅんせつ工事、水道施設工事、解体工事
建築一式工事の経験と、次にあげる業種のいずれかの経験が併せて12年以上あり、そのうち次にあげる業種の経験が8年を超える場合
大工工事、屋根工事、内装仕上工事、ガラス工事、防水工事、熱絶縁工事、解体工事
大工工事及び内装仕上工事において、経験が併せて12年以上あり、片方の業種の経験が8年を超える場合
とび土工工事の経験と解体工事の経験が併せて12年以上あり、解体工事の経験が8年を超える場合
通常であれば実務経験が10年必要になりますが、これらに該当するときは実務経験が8年あればよいとされています。
前もって有資格者を採用しておく
許可が必要になってから資格者を探すのは困難です。
前もって有資格者を雇い入れておくのも大事です。
たとえ資格を有していなくても、指定学科卒業の人材であれば実務経験が短くても専任技術者になることができます。
また、人材バンクや派遣会社に有資格者が登録されていることもあります。
ただし建設業は派遣が禁止されている業種です。施工管理技士として契約を結び派遣終了後に直接雇用に変える必要があります。法律上における問題がないかは専門家に確認しましょう。
過去に他者で専任技術者をしていた場合
過去に建設業者で実務経験にて専任技術者をしていた場合、下記のものを提出することで工事契約書等の提出を省略することができます。
- 前職の業者の受付印のある建設業許可申請書の写し
- 受付印のある専任技術者の変更届出書
- 建設業許可証の写し
- 前職の業者の専任技術者証明書または専任技術者一覧の写し
- 前職の業者での実務経験証明書
専任技術者の登録は、行政庁のデータベースに記録が残っています。
もし万が一、前職の専任技術者の登録が削除されていない場合は、現職で専任技術者となることができませんので、このような場合は確認が必要となります。
経営業務の管理責任者を置く際の裏ワザテクニック
経営業務の管理責任者を置くことができないために、許可取得を断念する建設業者は多いです。
しかし、対応方法が全くないわけではありません。
また建設業法にも改正がはいり、経管要件の難易度は下がって来ていると言えます。
- 経験は過去の合算で可
- 執行役員でも経管になれる
- 補佐人を置くことで要件を満たすこともできる
経営業務の管理責任者を設置する際のテクニックについて見ていきましょう。
経験は過去の合算で可
経管になるためには、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者として経験があることが必要です。
この5年は、継続した期間ではなくても大丈夫です。
複数の業者での経験であっても合算することができます。
個人事業主としての経験と会社役員としての経験を足すこともできます。
確認書類は、法人であれば「履歴事項全部証明書」や「閉鎖事項証明書」、個人であれば「所得税確定申告書」で立場の証明ができます。
経験の証明には、建設業許可業者であれば「建設業許可証の写し」、許可のない業者であれば「工事請負契約書」や「注文書と請書」といった書類になります。
執行役員でも経管になれる
執行役員とは取締役に代わって会社の業務を遂行する役職のことで、会社法でいう役員ではありません。
現在の立場が役員や令3条使用人ではないこの執行役員が、役員の直属であり役員に代わって建設業の財務・労務・業務を統括し管理することが認められれば、執行役員でも経管となることができます。
この際には、業務分掌規程や会社の組織図、人事発令書や執行役員が直接契約にかかわっていたことが証明できる書類等、追加の確認書類が必要となります。
執行役員を経管にするには許可行政庁に相談が必要となりますので、このような場合には事前に問い合わせをしてください。
補佐人を置くことで要件を満たすこともできる
経管を予定している人の経験が5年を満たさないときは、「補佐人」を他に立てることで要件を充足することがあります。
その詳細は以下の通りです。
常勤役員等のうち一人が次の事項に該当する者であること
- 建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等に次ぐ職制上の地位にあるもの(2年以上建設業の役員であり、5年以上建設業の財務、労務、業務のすべてに関わる役職であったこと)
- 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し2年以上役員等として経験を有する者(5年の役員経験のうち2年以上建設業の役員であること)
さらに次のすべてに該当する者を、当該常勤役員等を直接に補佐するもの(補佐人)としてそれぞれおくこと
- 財務管理の業務経験を5年以上有する者
- 労務管理の業務経験を5年以上有する者
- 業務管理の業務経験を5年以上有する者
補佐人の経験は、補佐人になろうとする建設業を営む者の経験(自社の経験)に限ります。
また、補佐人は一人ではなく複数人でも可となります。
この補佐経験で経管になるには、各行政庁の「経管認定」と呼ばれる作業が必要となります。
この「経管認定」には時間と労力と技術がかなり必要となりますので、該当する場合は専門の行政書士に頼むとよいでしょう。