建設業許可の新規取得は、事業をする上で一生に一度くらいしか経験することはないでしょう。そのため、多くの事業者にとって初めての許可申請となります。
建設業許可は、各種許認可申請の中でも複雑で要件が厳しいのが特徴です。要件を満たすためには、事前に行政書士に相談して、時間をかけて許可取得に向けて準備をしていくこともあります。
まずは、建設業許可の申請の全体の流れについて見ていきましょう。
建設業許可の申請の流れ
建設業許可における全体の流れは下記のとおりです。
- 許可の要件を確認
- 確認資料の用意
- 申請書の作成
- 許可通知書の受け取り
それぞれの流れについて詳しく見ていきましょう。
許可の要件を確認
建設業許可取得を考えている方は、事前に許可要件を手引きにて確認しておきましょう。
この要件を満たさない場合は、許可を受けることができません。
主な許可要件は下記のものとなります。
- 経営業務の管理責任者の設置
- 専任技術者の設置
- 誠実性を有していること
- 財産的基礎を有すること
- 欠格要件に該当しない
経営業務の管理責任者
建設業を行う場合、主たる営業所には経営業務の管理責任者(常勤役員等)を置かなくてはなりません。
「法人である場合はその役員のうち常勤であるもの、個人である場合は本人またはその支配人」かつ「法人の役員・委員会設置会社の執行役・個人事業主・令3条使用人において、経営業務について総合的に管理した経験(経管としての経験)を一定期間以上有する者」
また、他社において代表取締役である場合は、他社が複数代表である場合を除き経営業務の管理責任者となることはできません。
専任技術者の設置
建設業を行う各営業所には、取得したい業種について資格を持った専任技術者を置く必要があります。
「その営業所に常勤して、もっぱら請負契約の適切な締結やその履行の確保のための業務従事する事を要する者」で、かつ「決められた資格や経験を有する者」
専任技術者として認められるには、施工管理技士などの有資格者や指定学科卒業、実務経験10年を有する者などが必要となります。
誠実性を有していること
許可を取得しようとする際には、法人であればその役員、個人であれば本人が下記にあてはまらなくてはなりません。
「法人である場合においては、当該法人またはその役員等若しくは政令で定める使用人(支店長・営業所長)、個人である場合においてはその者または支配人が、請負契約に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者ではないこと」
財産的基礎を有すること
新規で建設業の許可を取得する際に、下記の財産的基礎要件のいずれかを満たす必要があります。
「申請を行う直前の決算において、自己資本が500万円以上あること」または「500万円以上の資金調達能力があること」
欠格要件に該当しない
欠格要件と呼ばれる主なものを挙げてみます。
「法人の役員・個人事業主等が、破産者ではないこと」
「法人の役員・個人事業主等が、禁固以上の刑に処せられていないこともしくは刑の執行を受けることがなくなってから5年を経過していないこと」
「暴力団員ではないことまたは暴力団員等によって事業活動が支配されていないこと」
許可取得後に欠格要件に該当することが判明した場合は、許可の取り消しとなりますので事前にしっかりと確認しておくようにしましょう。
確認資料の用意
建設業許可を取得する際、適切な建設業者であるかどうかを確認するために下記の書類の提出が求められます。
- 工事請負契約書の写し
- 身分証明書(役員、個人事業主)
- 登記されていないことの証明書(役員、個人事業主)
- 住民票(役員、個人事業主、経営管理責任者、専任技術者)
- 登記事項全部証明書(法人の場合)
- 常勤役員等及び専任技術者の常勤性の確認資料
- 健康保険等の加入状況の確認資料
工事請負契約書や社会保険加入の資料など事前に準備できるものもあります。
住民票などは、取得後三か月以内が有効期限となっていますので注意しましょう。
申請書の作成
許可申請時に提出する申請書類は下記のものとなります。
- 建設業許可申請書
- 申請書別紙一【役員等の一覧表】
- 申請書別紙二【営業所一覧表】
- 申請書別紙三【証紙貼付用紙】
- 申請書別紙四【専任技術者一覧表】
- 使用人数
- 誓約書
- 健康保険等の加入状況
- 営業の沿革
- 所属建設業者団体
- 主要取引金融機関名
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書
- 常勤役員等の略歴書
- 専任技術者証明書
- 許可申請者の住所、生年月日当に関する調書
建設業許可の手引きには、記載例が載っていますのでよく確認をしておきましょう。
許可通知書の受け取り
申請書類が完成したら、提出を行います。
書類が受付されてから、標準で30日~60日ほどで許可が下ります。
この期間は、各行政官庁によって異なります。
審査において不備や不足が見つかった場合は、処理期間が長くなります。
無事に許可が下りると、郵送にて許可通知書が申請書に記載した所在地に送られてきます。
許可通知書は再発行ができませんので、大切に保管するようにしましょう。
申請は自分で行うか行政書士に依頼する
建設業許可の申請には、自分で申請するか行政書士に依頼するかの二通りがあります。
それぞれのメリット・デメリットを踏まえてどちらの方法で申請するのかを決定しましょう。
自分で申請する際のポイント
自分で建設業許可の申請をするには、全体の流れを正確に把握しておかなければなりません。
また、役所との細かいやり取りも発生し、業務に支障をきたす可能性もあります。事前に、自分で申請をする際におけるポイントやデメリットについて把握しておきましょう。
手続きの流れを正確に把握しなければならない
建設業許可の申請には、その手続きの流れを把握しておく必要があります。
- 自身が要件をみたしているか確認
- 許可行政庁の申請手引きを取得
- 必要な資料の準備
- 申請書類の作成
- 行政庁へ提出
- 書類の不足や不備の対応
許可を取得しようとしてから許可が下りるまで、数か月を要します。
本来の業務を行いながら、申請の準備をするのはとても時間を要します。
そのため、しっかりと計画をたてる事が必要となってきます。
役所との細かいやり取りが必要
自分で申請をする場合、書類を提出して一回で受付となることはほとんどありません。
手引きを熟読していても、そこには書かれていない注意点やコツなどがある場合があるからです。
書類に不備があれば、再度取得し作り直す必要があります。
役所からは細かな点まで確認が入ります。
そのたびに役所に出向かなくてはならない場合もあります。
また、親切な役所ばかりではありませんので、聞いても詳しく教えてくれないこともあります。
行政書士に依頼する際のポイント
建設業許可を行政書士に依頼するかどうか迷う方は多くいます。
結論としては、建設業許可の申請は複雑なため専門の行政書士に依頼することで結果的に上手くいきやすくなるでしょう。
取得代行費用が発生する
行政書士に建設業許可申請を依頼する場合、報酬代が発生します。
これは行政庁に支払う手数料とは別となります。
新規であれば9万円、更新や業種追加であれば5万円の手数料がかかります。
建設業許可の新規申請の場合、行政書士報酬代は10万~15万円ほどです。
しかし、難しい申請を行政書士に行ってもらうメリットは大きいものです。
複雑な手続きを丸投げし事業に集中できる
建設業許可の書類作成は初めての方には難関です。
業務で多忙の中、申請に費やす時間を作るのはなかなか大変なことでしょう。
行政書士に依頼をすることで、最初のヒアリングで許可取得までの大体の目安がわかります。
そして書類の作成や提出、行政庁とのやりとりまですべて行政書士にお任せすることができます。
その間は事業に集中することが可能となりますので、行政書士への依頼を検討してみるのもよいでしょう。